人は古来より、物語を作り、語り合い、それを愛してきました。
現代であれば映画・小説・漫画・アニメといった形で、
昔は神話や伝承として、人々の間に受け継がれてきました。
なぜ人はこれほどまでに物語を求めるのでしょうか。
その理由は、人間の本能と関係があります。
■ 1. 物語は混沌とした世界に「意味」と「流れ」を与える
日々の出来事は複雑で、予測できず、時に理解しがたいものです。
人はそのままでは不安になります。
物語は、人が世界を理解し、共感するために作られ、そして好まれるのです。
起こったことには理由がある
今はこの段階にいる
この先にはこうした展開がある
散らばった出来事をつなぎ、
「一つの道」として捉えられるようになると、
人は安心しやすくなります。
■ 2. 物語は「自分という存在」を形づくる
人は変化し続ける存在です。
考えも感情も環境も、絶えず移ろい続けます。
その変化の中で、
「私はこのような存在である」
という感覚を保つために、人は自分自身の物語を作るのです。
私は何者か
私はどのように生きてきたか
私はどこへ向かっているのか
この物語が、自己という感覚の土台となり、
感情を安定させます。
■ 3. 物語は「他者とのつながり」を生む
誰かが語った物語に触れたとき、
心は自然とその人物の思いや苦しみに寄り添います。
映画やアニメを観て心が動くのも、
古代の人々が神話に魂を揺さぶられたのも、
結局は同じはたらきです。
物語は他者の感情や価値観に触れるための“橋”であり、
共感や理解を育てる力を持っています。
誰かの喜びを自分のように感じる
悲しみに寄り添う
遠い世界や時代の人々と心が響き合う
こうした体験が、人を豊かにします。
■ 4. 太古の神話も、現代のエンターテインメントも「同じ根源」から生まれている
古代の神話は、自然や死、運命といった
説明しがたい現象に意味を与えるために生まれました。
雷は神の怒り
四季のめぐりは神々の営み
人の運命には物語がある
これは、人が「意味を求める」性質を持つことの現れです。
現代の映画やアニメも同じです。
個の葛藤
愛や友情
成長と挫折
善悪
生と死の問い
これらは、何千年経っても変わらない人間の内側が反映された物語なのです。
物語が変わったように見えても、
根底にある欲求は古代から変わっていません。
■ 5. 物語を求めるのは、人間に備わった本能
物語を作り、それを好むという性質は、
時代が変わっても消えることのない人間の習性です。
なぜなら、
世界を理解したい
自分という存在を保ちたい
他者と心を通わせたい
苦しみに意味を見いだしたい
という欲求は、太古の人類も現代を生きる人々も、
根本的には同じだからです。
この性質は、未来においても失われることはないでしょう。
どれほど技術が進み、生活が変わっても、
人は物語を必要とし続けます。
■ 6. ただし、物語への執着は苦となる
物語は人を支え、導く力を持つ一方で、
それにしがみつくと苦しみの原因にもなります。
「人生はこうでなければならない」
「私はこの役を演じ続けなければならない」
物語を固定化すると、
現実がその通りに動かないとき心が乱れます。
大切なのは、
物語を味わいながらも、固く握らないこと。
物語は心を導く道具であって、
あなたを縛る鎖ではありません。
■ 結びに
人が物語を作り、それを好むのは、
世界と自分と他者を理解したいという、
深い願いがあるからです。
物語は太古から続く人間の性質であり、
今後も失われることはないでしょう。