AIが急速に高度化したことで、
「判断もAIに任せればいい」と誤解されることがあります。
しかし実際には、
AIがいくら進化しても最終判断は人間の領域であり、
そこでは基礎知識・歴史・経験・理念こそが重要です。
AIも人間も、認知バイアスから逃れることはできません。
AIはデータの偏りに弱く、
人間は思考のクセ(認知バイアス)に弱い。
だからこそ、己を磨き続ける必要があるのです。
この記事では、
認知バイアスとは何か
なぜ判断を狂わせるのか
経営判断ではどう表れるか
AI時代に必要な“研鑽”とは何か
をわかりやすく解説します。
■ 認知バイアスとは「脳の省エネ仕様」
人間の脳は、複雑な情報をすべて正確に処理することができません。
そのため、
思い込み
直感
過去経験のパターン化
によって「判断の近道」をつくる仕組みを持っています。
いろいろな情報を処理するには脳もエネルギーを使います。
だから省エネ性能を持っているのです。
これが認知バイアス(Cognitive Bias)と呼ばれるものになります。
便利な反面、とんでもないミスを生むことがあります。
重要局面ではこのバイアスが致命傷となることも珍しくありません。
■ 経営で特に危険な3つの認知バイアス
① 確証バイアス(Confirmation Bias)
「自分の信じたい情報だけを集め、反対情報を避ける」
● 中小企業でよくある例
うまくいっていたやり方に固執し、新しい手法を否定
気に入っている社員の欠点を見落とす
欠点が見えても「たいしたことない」と正当化する
結果:冷静な戦略判断ができなくなる
② 正常性バイアス(Normalcy Bias)
「そんなはずはない」「今まで大丈夫だったから今回も大丈夫」
● 代表的な経営例
市場の変化を見誤る
競合が高品質化しても危機感が出ない
技術継承の危機を“いつか誰かがなんとかするだろう”と思い込む
結果:気づいたときには手遅れに
③ サンクコスト効果(Sunk Cost Fallacy)
「ここまで投資したのだから、引くわけにいかない」
● よくある例
効果の薄い広告にお金をつぎ込み続ける
時代遅れの設備を使い続ける
事業撤退の判断が遅れる
結果:損失が増えるばかりになる
■ AIがあっても認知バイアスは消えない理由
AIが出力する情報が正確だとしても、
最終的に「採用するか」「どう判断するか」は人間の仕事です。
つまり、
AIの精度 × 人間の判断バイアス = 結果の精度
という構造になっています。
AIが進化しても、
判断する側の人間の脳のクセは変わらないのです。
またAIも人間が作ったものなのでバイアスがあります。
人間とAIのバイアスが合わさると判断ミスが増幅することもあります。
■ 必要なのは「研鑽」
AIがあっても、以下の力は人間にしか持てません:
① 基礎知識(歴史・業界構造)
歴史を知る者は未来を読みやすい。
市場構造を理解する者は、流行に振り回されない。
② 経験からの違和感察知能力
過去の失敗・成功パターンはAIよりも深い情報を持っている。
「なんか変だ」という直感は熟練の証。
③ 多面的に物事を見る力
物事には
人間関係
組織状態
社内文化
顧客の感情
過去の因縁
将来のリスク
などの文脈があります。
AIはこのすべてを把握しているわけではありません。
④ 自分のバイアスを自覚できるメタ認知
自分の思考過程を客観的に見ることを「メタ認知」と言ったりします。
自分の「癖」を把握しておくことです。
■ 認知バイアスに強くなる簡単な方法
① まず「自分も必ず間違える」と理解する
完璧な人間はいない。
この前提が、判断力の第一歩。
② 異なる視点の情報を必ず読む
肯定・否定、両意見を読むことで脳の偏りを中和。
AIなら「このニュースを賛成・反対の観点で要約して」
とさせるだけでOK。
③ 判断の理由を言語化する
なぜそう思ったのか?
理由を明確にするとバイアスに気づきやすい。
④ 過去の判断を振り返る(失敗含む)
失敗の分析は「認知のクセのメンテナンス」です。
■ AIは判断者ではなく判断補助ツール
AIは膨大な情報を整理し、
比較し、要約し、観点を提示できます。
しかし、
価値観
経営哲学
何を優先するか
何を守りたいか
これは人間にしか決められない領域です。
AIだけでもダメ、
人間の経験だけでも足りない。
両方が組み合わさって力は最大化します。
どちらか一方のみでは弱いものになるでしょう。
■ まとめ
認知バイアスは誰にでもある
経営判断のミスは多くがバイアス由来
AIが進化しても最終判断は人間
そのための「基礎知識・歴史・経験・思考の訓練」は必須
AIは判断を助ける道具として使うのが正しい
研鑽を止めないことが、
あなたとあなたの大切なものを守る最大の武器になります。